こんにちは。コアネット教育総合研究所の松原和之です。
シリーズ「子どもの学びを変える7つのキーワード」の6回目です。今回は「メタ認知」について取り上げます。
まずは、この文章をお読みください。
「資質・能力の三つの柱のうち、「学びに向かう力、人間性等」は児童生徒が「どのように社会や世界と関わり、よりよい人生を送るか」に関わる資質・能力であり、他の二つの柱をどのような方向性で働かせていくかを決定付ける重要な要素です。具体的には主体的に学習に取り組む態度も含めた学びに向かう力や、自己の感情や行動を統制する力、よりよい生活や人間関係を自主的に形成する態度等があり、自分の思考や行動を客観的に把握し認識する、いわゆる「メタ認知」に関わる力を含むものです。また、多様性を尊重する態度や互いのよさを生かして協働する力、持続可能な社会づくりに向けた態度、リーダーシップやチームワーク、感性、優しさや思いやりなどの人間性等に関するものも幅広く含まれます。」
出典)文部科学省初等中等教育局教育課程課「学習指導要領の趣旨の実現に向けた個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に関する参考資料」(令和3年3月版)p.20
この文章は、文部科学省が新学習指導要領の趣旨をより徹底して現場に浸透するために発出された資料の一部です。「メタ認知」は、新学習指導要領でいうこところの資質・能力の3つの柱の1つ「学びに向かう力、人間性等」に含まれる能力だということが明確に示されています。これからの学校教育においてはなくてはならない重要なキーワードの1つであることがわかります。
「メタ認知」の「メタ」とは「高次の」という意味です。つまり、「認知」(知覚、記憶、学習、言語、思考等)することを、より高い視点から俯瞰的に「認知」するということです。何かを実行している自分の頭の中で働く「もう一人の自分」と言ってもいいかもしれません。
よく漫画の登場人物が――例えば「サザエさん」に出てくる「カツオくん」が――お父さんの大事な盆栽を壊してしまって、どうしようかと悩むときに、頭の中に「悪いカツオくん」が出てきて「そんなのウソをついて誰か他の人のせいにしちゃえばいいんだよ」と言い、一方で「良いカツオくん」が出てきて「やっぱりちゃんと正直に謝ったほうがいいよ」と言うというシーンを見ますよね。これが「メタ認知」です。
ハプニングによって困惑している自分に対して、高次なところから判断のオプションを出しているのです。恐らく過去の経験等から「メタ認知」が働いているのだと思いますが、そこは漫画ですから、結局ウソをつくほうの選択をして、後でバレてこっ酷く叱られるんですけどね(笑)
他には「自分はミスしやすいから、必ずちゃんと見直しをしよう」とか「理解しにくい時には図や表で整理してみるといい」みたいな自分の認知特性について意識をしておくのも「メタ認知」です。
要は、自分のことを俯瞰視するということです。
これができているのと、いないのでは、学習成果に差がつきそうなことは感覚的にわかりますよね。
今年(2022年)2月に三宮真智子さんが著した「メタ認知」という本が中公新書ラクレから発行されました。この本のサブタイトルは「あなたの頭はもっとよくなる」です。三宮さんは「メタ認知で頭を上手に使う」「メタ認知で気持ちを整え、やる気を出す」ということを言っています。つまり、メタ認知をうまく活用すれば「頭がよくなる」んです。
メタ認知を使った学習方略(学習方略については2022年1月20日のブログをご参照ください)には、主に「理解監視方略」と「情緒的方略」があります。
「理解監視方略」は、「目標や計画を立てて学習する」ことや「何が分かっていないか確かめながら勉強する」「重要なところはどこかを考えて勉強する」といったことです。つまり、頭を上手に使うということですね。
そして「情緒的方略」は、自分で学習環境を整えることです。「机の上を片付けると勉強が進む」とか「夕食の前の時間が一番効率的に勉強ができる」といったことです。つまり、気持ちを整え、やる気を出すということです。
学力が高い子は、「メタ認知」という言葉は知らなくても、それを自然と意識せずに活用することができている子です。なかなか学力が伸びない子たちに、この「メタ認知」を活用できるようにしたら、どうなるでしょうか。無理に勉強を詰め込むよりも、まず「メタ認知」を活用できるように指導してあげるほうがよい気がしますよね。