こんにちは。コアネット教育総合研究所の松原和之です。
一橋大学イノベーション研究センターが編集し、東洋経済新報社から発行されている経営学論文誌「一橋ビジネスレビュー」の2019夏号の特集テーマは「教育改革のニューウェーブ」です。
本誌で初中等教育を特集するのは初めて、とのこと。
教育界で起こる様々なイノベーションを取り上げています。
その中のひとつ、AIを搭載したタブレット端末用学習アプリ「Qubena(キュビナ)」の学校における実証研究の論文がとても興味深いです。
この研究は、経済産業省の「未来の教室」実証事業の一環で行われています。千代田区立麹町中学校において、中学1年生から3年生までの授業で学習アプリを活用しました。
先生は講義を行わず、すべてこの学習アプリを使って、生徒が個々に学習を進めます。
習熟している生徒はどんどん解き進み、発展問題へチャレンジしていきます。習熟が遅い生徒はAIの導きで理解できるところまで戻って復習しながら進んでいきます。
先生はクラス全体をファシリテートしながら、教室を巡回して分からない生徒に個別に指導をします。生徒同士も教え合っています。
このような学習方法で、全員が通常の2倍のスピードで、予定された単元を学び終えたそうです。そして、単元テストの結果も通常の授業と同等かそれ以上の成果をあげました。
通常、先生が一斉型の講義を行う授業だと、平均的な習熟度の生徒に合わさざるを得ません。そうすると、学習スピードが速い子は物足りなく、遅い子は取り残されてしまいます。
しかし、このよう学習アプリを使うと、個別に最適化されたスピードで学ぶことができます。その上、搭載されたAIが一人ひとりの生徒の理解度に合わせて問題を生成し、積み残しがないように進んでいきます。つまり、個別最適化されすべての子が伸びることができます。
この学校では、履修すべき単元を早く終えた分、残りの時間はSTEAMなど探究的な学習を行ったそうです。
このようにeラーニングで効率的に知識習得学習を行い、探究的・協働的な学習を組み合わせて多様な資質・能力を育てることを「ブレンディッド・ラーニング」といいます。
北欧などの教育先進国では既に取り入れられている手法です。
AI先生の登場で、人間の先生の役割は変化していくのかもしれません。今のやり方に固執しないで新しいテクノロジーを活用して、子どもたちにとってより良い教育を考えていきませんか。