こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)の議論が深まる中で、注目されているのが、その評価についてです。アクティブ・ラーニングの評価、中でもルーブリックについて学ぶためにおすすめの書籍を紹介します。

■アクティブ・ラーニングの評価

(1)田中博之著「アクティブ・ラーニングの学習評価」(2017年、学陽書房)
早稲田大学教職大学院の田中博之教授の著書です。小学校・中学校に焦点を当てて、アクティブ・ラーニングの評価方法について詳述しています。事例も豊富で、かなり実践的な内容になっています。ルーブリックについても詳しく掲載されており、ルーブリックを活用したアクティブ・ラーニングの評価を考えている方には、かなりおすすめの1冊です。

(2)松下佳代・石井英真編「アクティブラーニングの評価」(2016年、東信堂)
アクティブラーニング研究の第一人者とも言える京都大学の溝上慎一教授監修の「アクティブラーニング・シリーズ」の第3巻です。京都大学高等教育研究開発推進センターの松下佳代教授、京都大学大学院教育学研究科の石井英真准教授をはじめ、高校の先生方がポートフォリオ評価、パフォーマンス評価などのアクティブラーニングの評価について著述しています。

(3)石丸憲一著「ルーブリック評価を取り入れた道徳科授業のアクティブラーニング」(2016年、明治図書)
創価大学大学院教職研究科の石丸憲一教授の著書です。新学習指導要領で教科化する道徳科について、その評価という観点から切り込んでいる著作です。道徳についてどのように評価しようかと悩んでいる方々に対して1つの方策を提言しています。それがICEモデルを使ったルーブリック評価です。とてもシンプルで分かりやすいアプローチです。

■パフォーマンス評価からのアプローチ

(4)西岡加名恵編著「資質・能力を育てるパフォーマンス評価」(2016年、明治図書)
ルーブリックについての研究論文も多い京都大学大学院教育学研究科の西岡加名恵准教授の著書です。パフォーマンス課題を活用した授業とルーブリック評価について提唱しています。ルーブリック作りについては、生徒の作品をベースとして特定課題ルーブリックを作る方法を推奨していて、とても地に足の着いた実践的な著述になっています。

(5)ダイアン・ハート著、田中耕治監訳「パフォーマンス評価入門」(2012年、ミネルヴァ書房)
紹介する10冊の中では数少ない洋書の翻訳本です。「真正の評価」という観点から評価についてアカデミックに整理しています。ポートフォリオ評価、パフォーマンス評価について詳述されており、ルーブリックについても触れています。

■資質・能力からのアプローチ

(6)奈須正裕著「資質・能力と学びのメカニズム」(2017年、東洋館出版社)
上智大学総合人間科学部教育学科の奈須正裕教授の著書です。アクティブ・ラーニングやルーブリックを中心にした著述ではありませんが、その前提となる新学習指導要領における資質・能力について、その背景やメカニズムも含めて詳しく述べています。新しい時代の学力について学びたいなら、とてもおすすめの1冊です。

(7)C・ファデル他著、岸学監訳「21世紀の学習者と教育の4つの次元」(2016年、北大路書房)
こちらもアクティブ・ラーニングやルーブリックの内容ではありませんが、21世紀のコンピテンシーの枠組を「知識」「スキル」「人間性」「メタ学習」という4つの次元でスパッと整理し、今後グローバルに求められる資質・能力について分かりやすく説明しています。OECDのEducation2030にもつながる考え方なので、ぜひ読んでおいて損はない1冊だと思います。

(8)石井英真著「今求められる学力と学びとは」(2015年、日本標準)
前述の石井准教授の著書です。コンピテンシー・ベースのカリキュラムについて、理路整然と語られており、とても分かりやすく為になります。ルーブリックについても少し触れられています。日本標準ブックレットという70数ページしかない短い書籍ですので、今求められている学力について知りたい方にとって気軽に手に取ることのできる1冊だと思います。

■その他

(9)西岡加名恵他編「新しい教育評価入門」(2015年、有斐閣)
前述の西岡准教授他の編著による入門書形式の書籍です。「教育評価とは何か」にはじまり、ポートフォリオ評価、パフォーマンス評価、ルーブリックなども含めた新しい評価方法も網羅した正に入門書として手元に置いておきたい1冊です。テーマごとに参考文献も豊富に紹介してあり、学習を広げたい人にもうってつけです。

(10)高浦勝義著「絶対評価とルーブリックの理論と実際」(2004年、黎明書房)
明星大学教育学部教育学科の高浦勝義教授の著書です。他の書籍とは異なり出版年が古く、日本のルーブリック研究としては古典的(?)著作です。学習指導要領改訂で絶対評価が導入された頃に一時期ルーブリックが注目されたことがありました。その頃に書かれた著作です。現在とはアプローチが異なりますが、ルーブリックについての研究については学ぶべきことも多く、おすすめの中に入れておきました。

 

以上、私が勝手に選んだアクティブ・ラーニングの評価やルーブリックを学ぶためのおすすめの10冊をご紹介しました。私のレビューはかなり雑駁なので、とにかく実際に本を手にとってみてはいかがでしょうか。