こんにちは。コアネット教育総合研究所の松原和之です。
先日、あるセミナーで国立情報学研究所の新井紀子教授の話を聞きました。新井紀子さんと言えば、東京大学合格を目指すAIロボット「東ロボくん」の開発で有名な方です。
東ロボくんは、2013年から大学入試の模試に挑戦しはじめ、2016年にはMARCHクラスの大学を合格圏内にとらえました。しかし、その時点で、「東大合格は無理」と開発を一時断念したという経緯があります。
なぜ、MARCHレベルまでは来たのに東大は断念したのか、とても興味がありましたので、新井先生の話にはとても関心がありました。
東ロボくんは読解問題が苦手だということは聞いていたのですが、どうやら、AIは自然言語を理解していないのだそうです。膨大なデータの中から、問われていることに関連するキーワードから近い言葉を引き出して答えを導いているだけで、文章の意味自体は理解していないということです。なので、やや複雑な文章読解問題になると、太刀打ちできないということです。それでは、東大レベルの問題は解けないですよね。
現在のAI技術では、脳の構造を模したディープラーニングの開発が進んでいるので、言語処理も可能になるのだそうですが、東大レベルの読解力をつけるためには、問題文と設問がセットになった文章を膨大に覚えさせる必要があり、それは物理的に難しいのだそうです。
一方、先日、書店でたまたま、奈良潤さんという方が書いた「人工知能を超える人間の強みとは」という書籍を見つけて購入し読んでみました。ここでは、AIを超える人間の強みは「直観」だという主張がありました。AIが膨大なデータ全ての中から検索して答えを導くのに対し、人間は全てのデータを検索するのではなく、経験から検索範囲を絞って答えを出せるのだそうです。
先ほどの読解問題に当てはめて言えば、文章の意味を理解しないで過去のデータから確率論として可能性の高い答えを導き出すAIに対し、人間は文章の意味を理解して、求められている答えのニュアンスも含めて理解して範囲を狭めて考えることができるということでしょう。
AIが人間の能力を超えるかどうかについては賛否両論あります。シンギュラリティが起こると主張する人と起こらないと主張する人がいます。
しかし、少なくとも将来は今よりははるかに高いレベルのAIが登場することは間違いありません。AIが人間の力を上回るかどうかよりも、いかに人間がAIを使いこなしてよりよい社会を作り出すかということを考えることのほうが大事だと思います。
高い技術は良くも悪くも利用できます。利用する我々の倫理観が大切だと改めて考えさせられました。