こんにちは。コアネット教育総合研究所の松原和之です。

シリーズ「子どもの学びを変える7つのキーワード」の3回目です。今回は「学習方略」について取り上げます。

学習方略とは、「学習の効果を高めることをめざして意図的に行う心的操作あるいは活動」(辰野千寿著「学習方略の心理学――賢い学習者の育て方」1997、図書文化) のことです。もう少し分かりやすく言えば、学習を効果的、効率的に行うために学習者がとる様々な方法のことです。英単語を覚えるのに、何度も書いてみる人もいれば、音読する人、単語帳に書く人、関連語を調べる人など色々な方法があります。それぞれに自分に合った学習方略で学んでいるのです。

英単語を覚える方法ぐらいでしたら、誰でも色々試してみて自分に合う方略を選べるのですが、学習全般に様々ある学習方略を適切に選べている生徒は多くはないのではないでしょうか。
実は、この学習方略について、学校できちんと教わっている人は少ないのではないかと思います。多くの人は、自分で試行錯誤しながら学習方略を手に入れているのです。
よく勉強ができると言われる人は、この学習方略をうまく使いこなしていて、勉強があまりできないという人は、学習方略をうまく使いこなせていないのです。どうしてこのような差ができるのかと言うと、学校できちんと教えていないからです。学び方がよく分かっていないから身に付かないのです。

学習方略には、大きく分けて「認知方略」と「メタ認知方略」の2つがあります。認知方略の中には「リハーサル方略」「精緻化方略」「体制化方略」などがあります。
「リハーサル方略」というのは、反復する、模写する、下線を引く、ノートに書くなど、記憶材料の提⽰後にそれを⾒ないで繰り返す方法です。暗記学習に使える方略です。
「精緻化方略」は、言い換える、要約する、類推するなど、イメージや既知の知識を加えることによって学習材料を覚えやすい形に変換し、本⼈の認知構造に関係づける操作のことです。学校のテストの点が伸びない生徒はこの方略がうまくできていないことが多いようです。丸暗記するのではなく、これまでに知っていたことと関連付けて覚えるということでしょうか。
そして「体制化方略」というのは、グループ分け、並べる、図表整理、階層化など、学習材料の各要素がばらばらではなく、全体として相互に関連をもつようにまとまりをつくることです。知識を構造化するので、学習範囲が広いときなどに有効です。こういった認知方略を使って学習をすると効果的だと言われています。

一方、メタ認知方略ですが、主なものは「理解監視方略」と「情緒的方略」です。メタ認知とは、自分のことを俯瞰的に見ることですので、メタ認知方略は、自分を客観的にみて自己成長につなげていく方略ということが言えるでしょう。
「理解監視方略」とは、生徒が自ら学習の目標を立て、その達成程度を評価し、次の行動を修正していくという活動です。自問したり、一貫性をチェックしたり、再読するといった方法です。これをすることで、自分の苦手を克服しつつ、自分の得意なことを伸ばすことができます。先の3つの方略をうまく使いこなすためにも、この理解監視方略が役に立ちます。
最後に、「情緒的方略」です。これは、自分で学習環境を整えることです。例えば、自分は机の上が片付いていないと勉強ができないと分かっていて、それを実行することです。または、夕食の前の時間が一番効率的に勉強ができると分かっていて、その時間にちゃんと勉強することです。つまり、情緒的な動機づけの方略です。学習に伴う不安を制御した上で学習意欲を維持し、時間を効果的に⽤いるように工夫するということです。

少し説明が長くなってしまいましたが、学習方略(=学び方)を知らないのに、勉強時間だけをたくさんとっても意味がありません。勉強してるのに、頑張ってやっているつもりなのに成績が伸びないという生徒さんは、学習方略が間違っている可能性があります。まずは「学び方を学ぶ」。これがとても大事なキーワードだと思います。
これからの時代は自立した学習者が求められると言われています。与えられる学びから脱却して、自ら学ぶ、その方法を自分で確立するということがとても大事なのではないでしょうか。

「子どもの学びを変える7つのキーワード」。次回は「モチベーション」について取り上げようと思います。