こんにちは。コアネット教育総合研究所の松原和之です。

シリーズ「子どもの学びを変える7つのキーワード」の4回目です。今回は「モチベーション」について取り上げます。

子どもの学びにとって最も大事なのは、このモチベーションだと思っています。同じことを学ぶのに、「やらされている」のと「自らやる気になっている」のでは大違いです。
でも、どうやったらモチベーションが上がるのか、やる気が出るのか、というのは教師にとって難しい課題だと思います。
そこで私は、このモチベーション課題に対して、脳神経科学の知見を応用できないかと考えました。

ここからは、コアネット教育総合研究所(私学マネジメント協会)主催のセミナーにも登壇していただいた神経科学研究者の青砥瑞人さん(DAncing Einstein Founder & CEO)の「BRAIN DRIVEN ( ブレインドリブン ) ~パフォーマンスが高まる脳の状態とは」という著書の内容をお借りしながら話を進めたいと思います。

脳内のシナプスで情報伝達を介在する物質を神経伝達物質といいます。神経伝達物質にはいくつか種類があるのですが、そのうちモチベーションに関わる代表的なものに「ドーパミン」と「ノルアドレナリン」があります。ドーパミンは快感や幸福感に関係した神経伝達物質で、ノルアドレナリンは激しい感情や強いストレスに関係した神経伝達物質です。
この2つの神経伝達物質の分泌の仕方で、脳内で発生するモチベーションの種類が異なるのだそうです。

ノルアドレナリンが多くドーパミンが少ない状態、つまりストレスの強いやる気が発生し楽しさは感じられない状態だと、モチベーションは長続きせずストレスにつながるそうです。逆に、ドーパミンが多くノルアドレナリンが少ないと、楽しさは感じるものの強いやる気を起こさないので、好きなこと(ゲームなど)にしか通用しないそうです。
やはり、ノルアドレナリンもドーパミンも適度に高い状態が良いそうです。それはどういうことかというと、楽しみながら、でもある程度の強制力が働いている状態です。
子どもたちにとって学校での学びは、そもそもある程度の強制力が働いています。なので、その状態で楽しいと思える状態をどう作れるかなのです。
これ以上書くと長くなりますので、詳しくは青砥さんの著書をご覧ください。

ドーパミンが多いと、行動心理学者のチクセントミハイが提唱した「フロー」状態になることがあります。いわゆる「没頭・没入」の心理状態です。この状態のときは、超集中しており、過酷な運動や学習でも気持ちよい状態で続けられるのです。集中して時間を忘れるなんてことを経験したことがありませんか。それがフローに近い体験だと思います。

ドーパミンは、新しい体験をしたり、創造活動している時に多くなるそうです。学校での学びに創造的活動を取り入れ、楽しく集中できる環境を作ることが脳神経科学の知見からいえるモチベーション高く学ぶための方法といえそうです。探究や総合の学習の中にも取り入れられる考え方ですが、教科学習の中でもこのような環境を作ることはできるでしょう。
ノルアドレナリンだけの強制的なやる気は、行き過ぎると強いストレスが発生します。「勉強しなさい!」の声掛けだけでは学びは長続きしません。学習に創造的活動を取り入れ、楽しく集中できる環境をいかに作れるか、みなさんも考えてみませんか。

「子どもの学びを変える7つのキーワード」。次回は「クリエイティビティ」について取り上げようと思います。