こんにちは。コアネット教育総合研究所の松原和之です。

昨日、閉会式が催され、2020東京オリンピックは終了しました。今大会では日本は史上最高のメダル数を獲得し、また多くの感動シーンを残してくれました。

私もステイホームの中、多くの競技をテレビで視聴しました。印象に残った試合、感動的な瞬間もたくさんありました。野球やソフトボールが見事金メダルを獲得した一方で、男子サッカーはメダル一歩手前で敗退し、選手たちは感動的な悔し涙を見せました。他にもたくさんの競技で選手たちに感動をもらいました。

中でも注目したのは、日本人最年少メダリストになったスケートボードの西谷椛さん(13歳10ヶ月)、そしてその記録を直ぐに塗り替えた開心那さん(12歳11ヶ月)です。新しい種目のためベテラン選手がいないのかもしれません。でも、中学生で世界の舞台で活躍する力をつけているのは素晴らしいです。
この2人に共通するのは、試合終了後のインタビューで「楽しかった」と語ったことです。日本代表としてオリンピックの舞台に立って、プレッシャーを感じたり緊張したりするのが当たり前だと思います。勝利へのプレッシャー感じるからこそ、失敗をしたりミスをしたりしてしまいます。でも、2人とも純粋にプレーを楽しんでいるのでしょう。楽しむことが先決、結果は後についてくる、と思っているのでしょう。これが新時代のスポーツ勝利の法則かもしれません。

卓球女子の伊藤美誠さんは、混合ダブルスで金メダルを取った時、「楽しかった」と話しましたが、団体で金メダルを逃した時も「もちろん勝ちたかったのが一番で、悔しい気持ちがすごくあります。でもやっぱり楽しくできました」と語りました。自己評価の軸が「勝つこと」以上に「楽しむこと」にあるのです。結果よりもプロセスが大事なのでしょう。よく考えれば、そもそもスポーツって、楽しむためにあるものですよね。

57年前の東京オリンピックの時はこんな雰囲気ではなかったと思います。勝利至上主義、勝ちこそすべて。経過は苦しくても、きつくても、勝てばいいのです。逆に負けたら批判を浴びる。勝てなければ価値がない。負けて「楽しかった」なんて言ったら大炎上する時代でした。
敗戦国の貧困から抜け出そうと高度経済成長中だった時代ですから、よくいえばハングリー精神があったのだと思います。「いまは苦しくても頑張れば明日は良いことがある」「先行きは明るい」、そんな時代感覚がスポーツにも反映していたんだと思います。いわゆる「スポ根もの」のドラマやアニメが流行ったのもこの頃です。

いまの日本は、経済的な豊かさは頂点を極め、将来の成長は見込むことができない時代です。こんな世の中で、「頑張れば将来は良いことがある」なんて誰も信じません。
若い人たちは、どうなるか分からない将来のために、いまを犠牲にするなどという感覚はない。いまを生きている。いまのこの一瞬、一瞬を最高の瞬間にするために最高のパフォーマンスをする。それが「楽しい」という言葉として表れるのだと思います。

昭和ど真ん中の高度成長時代と令和の先行き不透明な低成長時代。若者の価値観は明らかに違います。それをひしひしと感じたオリンピックでした。

いまだに「将来、良い大学に入って、良い企業に就職するために、いまは苦しくても勉強を頑張れよ」なんて指導をしている先生、そろそろ「東洋の魔女」や「アタックナンバーワン」の感覚から卒業しましょうよ。