こんにちは。コアネット教育総合研究所の松原和之です。

新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言下において、首都圏各都県で中学入試が実施されました。例年とは異なる条件下での入試でしたので、どのような様子だったのかを速報でお伝えします。

東京では、国立や都立は2月3日に、私立は2月1日から数日間にわたって入試が行われました。

特徴を私なりに整理しました。

1)全般に受験生は減っていない。

コロナ禍による経済的・心理的制約により、受験を控えるのではないかという予測がありましたが、どうやらそれはなかったようです。
日能研が発表した2021年度首都圏中学入試の受験率は20.8%(昨年度は20.2%)、受験者数は61,700人(昨年度は60,000人)ということですので、受験率、受験者数ともに増加してます。

2)コロナ休校によって私学の優位性が目立った。

受験生が増えた要因の1つに、コロナ第一波の際に全国の小中学校が休校になる中で、私学はいち早くオンライン授業による対応を行い、学びを止めないという優位性を見せつけたことがあると思います。
私学は、昨年3月の段階でパソコンやタブレットを一人一台持って学習する中学校が多くありました。既にICTを活用する教育を行っていたことが功を奏したと言えるでしょう。

3)安全志向の出願傾向があった。

いわゆる御三家などと言われる難関中学校の志願者がやや減少しました。
男子御三家では、開成(前年比98%)、麻布(87%)、武蔵(97%)、女子御三家では、桜蔭(105%)、女子学院(91%)、雙葉(92%)となっています。桜蔭を除いていずれも減少傾向です。
周辺県でも、神奈川県の聖光学院(前年比84%)、栄光学園(98%)、千葉県の渋谷幕張(81%)、埼玉県の浦和明の星(93%)などトップ校の志願者数が減少しています。
一方で、中堅校で志願者数が急激に増えて難化した学校も多くありました。
コロナ禍での様々な不安心理が安全志向につながったのではないかと思います。

4)各校のコロナ対策により大きな混乱は起こらなかった。

緊急事態宣言下での入試実施でしたので、各校がかなり神経を使ってコロナ対策を行っていました。
検温、消毒はもちろんのこと、面接試験を中止にする、試験会場となる教室の座席数を例年より減らす(密の回避)、休憩時間に換気を徹底する、保護者の控室を広くしたり人数制限をする等。
入試当日にコロナに罹患していたり濃厚接触者だったりした受験生のために別日程の追加入試を設定していた学校もたくさんありました。
しかし幸いなことに、私が知る限り、追加入試を利用した受験生はほとんどいなかったようです。
学校が入試を一回増やすことはかなりの負担となります。入試を行うためには様々な業務が増えます。入試問題をもう1セット(国算社理)作るのは並大抵の苦労ではありません。それでも追加入試を設定したのは、学校としての受験生への最大の配慮だと思います。

5)同レベルの中では知名度が高い学校が志願者数を増やした。

入試を行う場合、中学校側から見れば、同レベルの学校同士で、受験生に選ばれるかどうかの競争をしていることになります。学校同士でしのぎを削っているのです。
一般的な知名度がない学校の中にも良い教育をしている学校はたくさんあります。そういった学校は、多くの受験生に知ってもらうために、日々広報活動に力を入れています。しかし、今年はコロナ禍の中で、充分な広報活動を行うことができず、苦戦を強いられました。

2021年度入試は以上のような特徴があったと思います。

次年度に向けては、まだまだ予断を許さないですが、コロナが終息に向かえば、通常通りの入試になっていくと思います。いまの5年生児童たちが来年受験をすることになりますが、今年度は文化祭等のイベントも実施できなかった学校が多いので、学校を見る機会が少なかったと思います。
学校側はなるべく多くの説明会や見学会を実施して多くの受験生に訪問の機会をつくってほしいと思います。
幸いコロナ禍でのイベント開催のノウハウもたまってきていると思いますので、感染防止をしっかりと行いながら、学校の魅力を伝え受験生のための学校選択の機会を多く設定してください。

受験生側も多くの学校を訪れて、本当に自分に合った、よい教育を行っている学校を探してください。

いずれにしても、コロナの早い終息を祈ります。