こんにちは。コアネット教育総合研究所の松原和之です。

学習指導要領は、教育基本法に基づき全国の学校における教育課程の基準を定めるものですが、およそ10年に一度大きな改訂があります。今年度(2020年度)は小学校、来年度(2021年度) は中学校の新しい学習指導要領が全面実施されます。そして、2022年度には高校の新学習指導要領が年次進行(高1から順次)で適用されます。

学習指導要領の改訂は、単に科目名が変わったり、教える内容(単元)が変わったりするだけではなく、学校教育のコンセプトそのものが大幅に変わることもあります。
今回の改訂は、かなり大きなコンセプト・チェンジがあります。ここでは、そのすべてを記すことはしませんが、学習評価の在り方についてだけ言及しようと思います。

みなさんは「評価」というとどんなイメージを思い浮かべますか。
子どもの頃、学校でテストを受けて良い点数がとれず、低い評価をつけられ、親に怒られたという記憶がある方もいるでしょう。通知表をもらうたびにビクビクしていたとか、内申書に良く書いてもらうために、3年生になると良い子の振りをしていた、なんていう人もいるかもしれません。

とかく、「評価」というと、「先生から一方的に通知されるもの」、「入試につかわれるもの」、「それによって格付けされたり、落第にされたりするもの」というイメージが付きまといます。

しかし、本来の評価の役目は、学習の改善点を見出したり、次の目標設定の視座にしたりするためのものです。生徒自身が「何が出来ていて、何が出来ていないか」や「どうすれば出来るようになるか」を把握しなければ意味がありません。

今回の学習指導要領改訂では、小中高とも、「主体的・対話的で深い学び」を行うことが強調されています。これまでの学びが、「受動的・一方的で浅い学び」だったのだとすると、学習のプロセスそのものが180度転換されることになります。それに連れて、当然、学習評価の在り方も変わらざるを得ません。評価も、「受動的・一方的で浅い評価」から「主体的・対話的で深い評価」に変わるということです。

生徒が自ら主体的に評価に関わり、生徒と教師、生徒と生徒が対話する中で評価を行い、学習の高まりに深く関与する評価が行われなければなりません。つまり、生徒が自己評価を行い、生徒同士の相互評価や教師によるフィードバックをきちんと次の学習に活かしていくような評価が求められるということです。

学習指導要領においては、「単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら評価の場面や方法を工夫して、学習の過程や成果を評価し、指導の改善や学習意欲の向上を図り、資質・能力の育成に活かすようにすること」と表現されています。つまり、「指導と評価の一体化」を図るということです。評価は、結果を伝えることではなく、学習改善につながるプロセスとして捉えることが大事だということです。

もう1点、高校における学習評価として大きな変更点をお伝えしておきます。高校においては、小中学校とは違い、これまで「観点別評価(※)」を行うことが慣例化していませんでした。しかし、今回の改訂では、高校の生徒指導要録の参考様式に観点別評価の欄が設けられました。つまり、高校においても観点別評価を行うべきだという強制力が働いているということです。

※観点別学習状況の評価とは、学習指導要領に示す目標に照らして、その実現状況がどのようなものであるかを、観点ごとに評価し、児童生徒の学習状況を分析的に捉えるものです。観点は、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つです。

既に各都道府県では、高校における観点別評価から評定への評価の流れや方法のガイドやマニュアルを作成していますので、2022年度以降、全国の公立高校では観点別評価を行い、それを基に評定をつけるということが一般化すると思います。

私立高校は、経営の独自性があり、この強制力の枠外にあると思えば、これまで通り、主に定期テストの得点を基に評定をつけるという従来方法でも構わないのかもしれません。しかし、学習指導要領の改訂とは、国が世界的な社会の変化や時代の趨勢を捉えた上で時間をかけて検討し、必要な変更を加えているものです。その方向性に背いて従来通りの方法を続けるのは、独自性と言えるのでしょうか。逆に時代の先取りをして新しい社会を切り拓いていくのが私学の独自性の源なのではないでしょうか。それを考えると、ただ単に惰性で従来通りの方法を取り続けるのではなく、一度、学習指導要領で求める変更についてきちんと理解し、自らの理念や方針を踏まえて、採否をよく検討した上で、独自の方法を決めていくべきだと思います。

これからの時代を生きる生徒たちのために何がベストなのかを考えて行動していきましょう。