こんにちは。コアネット教育総合研究所の松原和之です。

現在(2020年8月24日まで)、国立新美術館で「古典×現代2020―時空を超える日本のアート」という展覧会が開催されています。テーマを決めて、現代美術と江戸時代の美術を組み合わせて展示するという面白い企画です。主題や造形の類似はもちろん、先達から得た着想や、誰もが知る名品とそのパロディ、古典作品を取り込んだインスタレーションなど時空を超えたアートの対話が繰り広げられています。日本のアートの魅力を新たな視点で発見できる楽しい展覧会です。

「花鳥画×川内倫子」「刀剣×鴻池朋子」「葛飾北斎×しりあがり寿」など8組のペアが登場しますが、一番印象に残ったペアの作品をご紹介しましょう。
それは、曾我蕭白と横尾忠則のペアです。

曾我蕭白は1730年、京都生まれ。狩野派・曾我派・雲谷派の画法を学んだとされますが、伝統的な題材にデフォルメを加えた奇怪な画風で評判を呼んだという人です。一方の横尾忠則はご存じの方も多いと思いますが、直観に支えられた圧倒的な筆力で制作を続ける現代画家です。このペアの作品を展示している部屋に入ると、その両人の力強い作品に圧倒されます。

蕭白の作品は「寒山拾得図屏風」という水墨画なのですが、よくあるシンプルで落ち着いた水墨画ではなく、情感あふれるダイナミックな作品なのです。横尾は蕭白の作品を「デモーニッシュ(悪魔的)な」絵画だと言います。私にもピンとくる表現です。生命の高揚はもちろん、不安や恐怖、いかがわしいものや奇怪なものへの好奇心などを画面に解き放っていると言うのです。
そしてこの作品をオマージュして横尾が作ったのが「寒山拾得2020」という名の油彩画です。蕭白の「寒山拾得」も迫力がありますが、さらにそれを大胆に自分の世界観で表現する大迫力の作品です。

私たちは、この両作品を同時に見ることで何を感じることができるのでしょうか。蕭白は室町後期に活躍した曾我蛇足の古めかしく豪放な画風に倣って、中国絵画や狩野派の高尚さを卑俗に転じて換骨奪胎する作品にしました。横尾もまた、蕭白の作品から得たイメージを特定の時代や空間に縛ることなく画面に横溢させました。芸術は時代を超えて影響を与えますが、それを時代に合わせて理解し、また画家個人の世界観でアレンジして発露していく――そんなリスペクトとオマージュの連続なのでしょう。

展覧会のホームページに「故きをたずね、新しきを知る」と書いてありますが、まさに芸術には「温故知新」が大切なのでしょう。現代の社会は変化のスピードが速いですが、時代に流されることなく本質を見極めながら生きていきたいものです。

江戸時代の刀剣と一緒に展示されていた鴻池朋子の作品。牛革を貼り合わせた巨大なカンバスに表現した絵画