こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

先週末、東京大学教育学部附属中等教育学校の公開研究会に参加してきました。以前、探究学習についての取材で訪れたことがあるので、2回目の訪問です。

東大附属では、かなり前から協働学習や探究学習の研究を続けてきており、2016年度からは「ディープ・アクティブ・ラーニングを可能にするカリキュラムの開発」というテーマで研究開発指定を受けています。

探究学習ということでは、総合的な学習の時間を「探究的市民科」と呼び、6年一貫の探究カリキュラムを確立しています。一方で、教科の授業においても、協働的な学びを進めており、今回の公開研究会でも、様々な教科の授業を見学することができました。

研究会の最後にはシンポジウムが開かれ、生徒3名(5年生1名、6年生2名)も交えてパネルディスカッションが行われました。
面白かったのは、いま6年生の生徒たちが1年生の時からの学びを振り返り、変化や成果を探っていったことでした。

その中の1つのイシューとして、「探究学習が教科学習にどのような影響を与えるか」という議論がありました。生徒の1人が「1年生の頃から探究的市民科の授業を受けていることで、自分の意見を持つことができるようになる。それが教科における話し合い(協働学習)にも生きる。教科の場合は(探究的市民科よりも)答えが1つになる課題が多いが、それでも解法や答えに辿り着く筋道など、自分で考え、表現できるようになる」と言っていました。こうやってきちんと自分を振り返って発言できる生徒がいること自体が探究学習の成果を表しているな、と感心しました。

一方で、2年生の時に行った探究的市民科の授業(具体的には演劇を取り入れた身体表現の授業)は今に活きていないという趣旨の発言をする生徒もいました。でも、こうやって大勢の人前で堂々と自分の意見を話している時点で、学習の成果はあったと私は感じました。
(やらせではなく、その場で自分の意見を形成しているように見えました)

パネリストとして登壇していた神戸大学附属中等教育学校の勝山副校長先生は、このことについて、このように解説していました。「総合学習や探究学習が教科学習に役立つか、と生徒に聞くと否定的な回答が多い。それは生徒にとっての学びがコンテンツベースで考えているから。コンピテンシーベースの学びの概念を生徒が理解すれば、回答は変わってくるだろう」と。

私もそう思います。探究学習を行う場合、身に付ける資質・能力(コンピテンシー)を明示して、生徒に学習目標を意識させることが大事です。例えば「自分の意見を形成する力」を身に付けることが学習目標だと明示されていれば、その学びをそのように自己評価できます。ここにルーブリックの重要性が見出されます。ルーブリックで身に付けるコンピテンシーを明確にすることはとても大事です。

6年間の中で、総合学習で培った「探究する力」が教科学習で活かされてこそ、新たな時代に求められる資質・能力(コンピテンシー)が育っていきます。今回の公開研究会では、生徒の言葉としてその確認ができたことが有益でした。ありがとうございました。


グラウンドからは新宿副都心の高層ビル群が間近に見える立地です