こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

首都圏の中学入試は、都立中高一貫校の発表も終わり、ほぼ一段落がついたところです。

生徒募集をする学校側の視点で、今年の首都圏中学入試を振り返ってみましょう。(受験生側の視点でのきちんとした総括は大手模試業者さんにお任せします!)

今年は、首都圏の受験生総数は増加しました。私立受験者のほぼ全員が出願をすると言われている2月1日午前の全出願数をみると、昨年より約2千人増えています。
ここから推定すると、今年の私立中学受験者は7~8%増えています。

2008年のリーマンショック以降下がり続け、ここ2~3年横這い状態だった中学受験マーケットがやっと動き出したと言えるでしょう。
やはり、世の中の景気が少し良くなってきたのでしょうか。私個人はまったく感じませんが、一部ではミニバブル到来などとも言われています。
大手の中学受験塾では低学年を中心に生徒数が増えているとも聞きます。
私立中学にとってはとても嬉しい情報ですね。

各校の志願者数を見ていると、いくつかの傾向が見えてきます。
まずは、共学校人気です。先ほどの2月1日出願数でみても、男子校、女子校はほぼ前年並みなのに対し、共学校だけが2千人増えています。

次に大学付属・系列校人気です。いま2020年度の大学入試改革が話題になっています。受験生の保護者はこの混乱を嫌って大学付属校を狙うようになっているのでしょう。

そして、3点目は、入試形態の多様化です。これまで私立中学入試は、国語・算数の2科目か社会・理科を加えた4科目を課す入試がほとんどでした。ところが近年は教科の枠にとらわれずに思考力を問うような思考力入試、小学校ではまだ正式教科にはなっていない英語を問う英語入試、公立中高一貫校の適性試験を真似た適性試験型入試、国語や算数などの単科入試、いわゆる一芸入試のようなポテンシャル入試など様々な入試形態が選択できるようになりました。これも受験生のすそ野を広げ、受験生総数を増やした要因になっています。

あと、少しマニアックな話になりますが、大学入試と同様に、中学入試でもWEB出願が一般化しました。そのことにより、無駄な出願が減ったと言われています。紙の願書に書いて窓口に提出しなければいけない場合は、事前に準備をしておかなければなりません。しかし、WEB出願の場合は24時間受け付けていますし、入試の前日や当日でも、受験料をクレジット決済して出願できます。つまり、前もって何校も出願しておかなくても、受験した学校の合否結果を見てから次の学校に出願すれば良くなったのです。
受験生からみればとても便利になりましたが、学校側はギリギリまで受験者数が読めず、ヤキモキするようになってしまいました。そして、受験料収入は減ってしまったでしょう。

一方でWEB出願の利用で、遠方でも出願しやすくなりました。そのおかげで、埼玉県や千葉県の学校の東京からの受験生が増えているようです。もともと東京に本命があっても、入試日程が早い埼玉や千葉の学校を試しに受けてみるという慣行はあるのですが、出願が手軽になってその行動も助長されたのでしょう。首都圏の交通網がますます便利になって、埼玉や千葉の学校も実際に東京から通える対象になったということも要因の1つでしょう。

4点目ですが、受験生の女子校離れは近年大きな問題になっていましたが、今年はそれも少し落ち着いたようです。
しかし、昨年大きく落ち込んだ偏差値40~45の中堅校が今年は合格ラインを甘くして不合格者を絞り込んだので、偏差値30台の学校は併願層の確保ができなくなって、かなり厳しい結果になりました。

でも諦めずに頑張りましょう。来年も受験者総数が増えることは間違いありません。それをすべて共学校に取られないように女子校の良さをアピールしてください。諦めずに努力して良い教育を実現する学校にはきっと受験生が集まってきます。

実はマーケットが悪くなっている時は、どの学校も一律に悪くなっていきます。しかし、マーケットが良くなっている時には、そのチャンスをつかむか、つかめないかで大きな差ができます。つまり二極化が進むのです。

このブログをご覧になっている賢明な女子校の先生はお分かりだと思います。このチャンスを逃さないようにしましょう!