こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

今月の「ハーバード・ビジネス・レビュー」はとても面白かったです。最近、私が常に考えていることに大きなヒントを与えてくれる内容でした。

そのタイトルは「知性を問う」です。人工知能(AI)の時代だからこそ、人間の知性の本質とは何かを考えなければならない。これは、私の問題意識に重なります。

このタイトルで、4人の方の論文、インタビューが掲載されているのですが、その中の1人、ヤフーCSOの安宅和人氏の論文から、印象に残った点を紹介したいと思います。

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安宅氏は、AIが得意なのは情報の識別や予測、実行過程の自動化であり、不完全な情報の中で問いを見立てたり、単層ではないタイプの問いに答えることはできない。知的生産の本質は何らかのイシューに答えを出すことであり、大切なのは正しいイシューの見極めだ、と言います。
仕事の多くは課題解決であり、その要素である(1)課題の性質の見極め、(2)大枠のイシューの見極め、(3)課題の腑分け、(4)答えを出すアプローチの見極め、(5)分析的に答えを出す、(6)統合といったものはAIにはできない。つまり、知的生産の多くの過程は当面人間の仕事として残る、とも記述しています。

AI全盛の時代になるからこそ、人間には「思考」することがますます求められるのだと思います。

安宅氏によれば、思考とはインプットをアウトプットにつなげることであり、情報を知覚(感覚)し、理解し、統合し、判断し、実行につなげることです。

情報収集や分析の量と質を上げるためにはAIは活用できますが、正しい課題解決に結びつけるのは人間の知性です。
また、情報収集はAIがやるからといって、知識は必要ないかというと、そうではないと安宅氏は言います。

いちいち必要な情報を脳にアップロードしなければならない人では適切な判断は難しい。どれほどAIが発達して知識や判断をサポートしてくれるようになっても、過去の先人がつくり上げてきた知的体系を学ぶことの必要性は変わらない。知的体系の理解なしには、その場で起きている問題を総合的に見立て、把握し、判断することができない、と言います。

学習指導要領の改訂や高大接続改革の議論の中で、思考力・判断力・表現力等を重視する傾向に対し、「知識は必要ないのか」という反論を述べる方がたくさんいます。安宅氏の論を見れば、ビジネスの現場にいる方から見ても、知識は必要だということです。

その通りだと私も思います。決して知識が不要になるわけではありません。しかし、子どもたちの学ぶ機会や時間は有限です。思考力等の汎用的な資質・能力を身に付けるための学習を行うためには、これまでのやり方では無理です。細かい知識はAIに任せておけるので、メタレベルでの知識や思考や判断に活用できる形で身に付ける知識を重視することが大切なのではないでしょうか。

この手の議論が抽象論では済まないことは私も認識しています。アクティブ・ラーニングをより実践的にするためには避けて通れないポイントです。
AI時代の人間の知性とは。そして、それを身に付けるために学校で学ぶことは何か。
これからも、より具体的に考えていきたいと思います。