こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

先週、福岡県私学協会主催の研修会で「私学における教育ICTの重要性」について講演をしました。研修会では、私が基調講演をしたあと、八千代松陰中学校・高等学校副校長の井上勝先生が実践報告を、情報通信総合研究所特別研究員の平井聡一郎先生が実際にタブレット端末を使った演習を行いました。
私学協会の主催ということもあって、90名もの参加者があり、盛況に会を終えることができました。

私は、私学経営においてなぜ教育ICTが重要なのか、ICT導入を成功させるためのポイントは何か、といった話をしました。

学校教育におけるICT活用、特に生徒にタブレットを持たせることが、どのような意義を持つのか、ということはよく議論の的になります。

タブレットの教育上の有効性は、一般に、ICT活用スキルを身に付けることや、ICTをツールとして活用することで学びの効率と効果を追求することで語られます。

タブレット導入を検討している学校で、推進派と反対派で対立する場合があります。推進派はICT活用のメリットを上記のような理由で説明するのですが、反対派の先生たちにはは理解されません。

ICT活用スキルは情報科の授業で行えばいい。普段の授業からタブレットを持たせる必要はない。
タブレットを活用すると授業が効率的になるというが、黒板とプリントで授業は十分成り立っている。といった意見で反対されます。

この齟齬は、推進派がICTのメリットを強調し過ぎるあまり、反対派の先生には「ICTがすべて」のように聞こえていることから生まれていると思います。

私は、タブレット導入の目的は「生徒にデジタルとアナログを適切に使い分ける力を身に付けさせるため」と説明しています。
私たち大人も、デジタルが有効だと思うところはICTを活用し、デジタルよりもアナログの方が有効だと思うところはICTに頼らないで済ましています。例えば、気持ちを伝える文書ではワープロではなく手書きするとか、自分の考えをまとめるだけならネット検索で調べるけれども、正式なレポートは文献を参照・引用するなどです。

私は、何が何でも学校教育にICTを導入するべきだとは思っていません。ICT絶対主義者でもありません。でも、子どもも大人も、これだけICTが溢れた社会に生きているのに、学校の中だけICTを断絶した環境を作り出すのも違和感があります。デジタルツールを選択肢として与え、その環境で適切にデジタルとアナログを使い分けるということを覚えさせることが大事だと思っています。

タブレットは仕事や学習にとても便利なツールです。インターネットにつながることで世界は広がります。しかし、一方でタブレットはエンターテイメントの入り口でもあります。ゲームやYoutubeやSNSにアクセスできます。それを嫌う先生はいるでしょう。
でも、学校でタブレットを与えなくても、自宅ではほぼ全員がスマホを持っていてゲームやYoutubeやSNSに自由にアクセスできる環境にいます。
それであれば、学校で、あえてタブレットを与えて、学習と遊びの境目を教えたり、時間管理や自己管理を教えたほうがよいのではないでしょうか。

次期学習指導要領では「社会に開かれた教育課程」がポイントの1つになっています。これまでの学校は、社会から閉ざされた空間で純粋に学問体系の基礎を教えようとしていたきらいがあります。しかし、それではこれからの激動する社会を生き抜いていく力を身に付けさせることはできません。もっと社会に目を開き、その中で生きるために必要な資質・能力をどう磨き、いかに社会に漕ぎ出ていくか。そのような主体的な態度を身に付けさせることが大事だと思います。ネットの社会に対する態度も同じです。ネット社会が怖い所だからと断絶するのではなく、その中をどう力強く生き抜いていくか、そういうことを教えていかなければなりません。

福岡の講演ではそのような話もしました。

ICT、なかんずく生徒用タブレットの活用については、その目的や目標をよく共通理解してから進めることをお勧めします。