こんにちは。コアネット教育総合研究所の松原和之です。
先日、東京都立高校総合学科教育研究部会に招かれて「キャリア教育におけるルーブリックの活用方法について」というタイトルの講演をしてきました。
東京都には総合学科高校が10校あります。晴海総合高校、つばさ総合高校、杉並総合高校、若葉総合高校、青梅総合高校、葛飾総合高校、東久留米総合高校、世田谷総合高校、町田総合高校、王子総合高校です。
研究部会は、この10校と六本木高校、世田谷泉高校を含めた12校の校長先生方で構成されています。
これら12校は、平成26年度より「総合学科で育てる力」を主題として調査研究を進めており、その一環としてルーブリックの開発にも取り組んできています。「産業社会と人間」という科目におけるルーブリックを試作し、既に実際の授業で試行的に活用しています。授業実施後には、生徒と教員を対象にアンケートを行い、効果検証もしています。
私の講演の中では、その研究報告書のβ版を見た上での私の意見・考察を述べさせていただき、さらに私なりの理論でルーブリックの改善点を話しました。
私は、ルーブリックは教育目標をブレークダウンしたものであるという「目標アプローチ」でルーブリックを作成すべきと主張しています。生徒たちの現実を踏まえて、相対的な評価を行うためのルーブリックを作成する「評価アプローチ」とは一線を画します。その点で、既に各校で試作しているルーブリックに改善アドバイスを行いました。
もちろん、「評価アプローチ」で課題ルーブリックから作り始める方法は間違っていません。しかし、この方法だと、どうしてもアウトプットとしての作品や活動を対象に評価してしまうため、評価基準の記述もアウトプット中心になりがちです。
私としては、ルーブリックで評価する対象はアウトプットではなく、アウトカム(生徒に身に付いた資質・能力)であるべきだと思っています。
従って、そもそも学校として生徒に身に付させたいと考えている教育目標からブレークダウンするのが筋だと考えています。
総合学科は、生徒の学ぶ意欲を高め、個性を伸ばす柔軟な教育により、総合的な学力を育むことをねらいとする学科です。生徒一人ひとりの興味・関心や進路希望に基づき、普通科目だけではなく、専門科目も加えて、自らが時間割をデザインして学べるようにしているとてもチャレンジングな高校です。
そして、その総合学科を持つ都立高校が、各校で試作したルーブリックを使って実際に授業を行い、アンケート調査による考察まで行っているというのは、先進的でとても素晴らしい取り組みだと思います。
様々な生徒たちに、未来を生きる資質・能力を身に付させてあげるために、総合高校がルーブリックを活用してより良い教育が行えるよう、私も微力ながら応援していきたいと思います。そして、この取り組みが全国の公立・私立高校の発展に寄与するといいな、と思っています。